小人舎が発行する絵本WEBマガジン[コビマグ]

小人くんの千夜百五十冊

第5回 「あらいぐまとねずみたち」

たかが絵本、されど絵本

あらいぐまとねずみたち

子供の頃、絵本に登場する「家」に憧れたものである。その多くは、擬人化された動物たちが住んでいる家で、大抵、子沢山で部屋もいっぱいある。その賑やかな様と家の中にある様々な施設に子供心が揺さぶられたのだ。
この絵本に登場する、「ねずみ」の家も、滑り台で外から直接入れる大浴場、食堂、床屋、託児所、音楽室、美術室、ヘルスクリニック、何故だかわからないが、恐らく「ぐりとぐら」と思しき絵本にかじり付く、ねずみの子供たち。中には本当にかじり付いた輩もいるのか、絵本の端が欠けている。
はたして、こんなに楽しい生活空間があるだろうか? 非常に羨ましい。この飛躍した発想に基づいて生まれる「家」が大好きだったのである。

あらいぐまとねずみたち

憧れのお家

そして、この本にはもう一つ、大切な要素がある。ねずみの一家に「じゃがいも」や「まめ」を盗まれた「あらいぐま」の親子がねずみファミリーを懲らしめるのだが、「食べ物が無くなると死んでしまう」という、ねずみのために、「じゃがいも」の種いもと、育て方を伝授する。
これによって、ねずみは自給自足を実現し、最後は、あらいぐま一家に「おかえし(ん? これ前に聞いた響きだな?)」として、育てたじゃがいもを持っていくのである。

話を飛躍させてしまって恐縮だが、以前、私は「貧乏人にはお金をあげても意味がない。貧困から抜け出す知恵と、必要最低限の資金、物資を与えることが肝要だ」といった話を聞いたことがある。実に、言い得て妙である。
もし、「あらいぐま」が「ねずみ」に、じゃがいもをあげるだけだったとしたらどうだろうか。恐らく、じゃがいもを食べ尽くしたところで再び、盗みにやってくるだろう。
でも、「あらいぐま」が必要最低限の(人間であれば、資金、物資に該当する)「種いも」と「知恵(育て方)」を与えることによって、真の自立を手に入れることができたのである。

この絵本の作者にそのような思想があってのことなのかどうかは分からないが、絵本一冊からそこまで読み取れるということは、たかが絵本、されど絵本、である。
「絵本は教育の原点」。この言葉を胸に、「絵本屋さん」としての誇りを改めて感じさせられた次第である。

あらいぐまとねずみたち

あらいぐまがねずみに物資と知恵を与える

森の小川で「あらいぐま」らしく、食器を洗う親子。ところが、家に帰ると事件発生! 「なんじゃこりゃ!!!」という心の叫びと共に「じゃがいも泥棒」の捜査に着手。あらいぐま親子の怒りが「ノーブレス・オブリージュ」に昇華される様は、一読の価値あり。

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あらいぐまとねずみたち

あらいぐまとねずみたち

  • 大友 康夫
  • 福音館書店
  • 価格:448円

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